第1章 序説: 基本的原理


第1章 序説 Introduction


ఔ 基本的原理 BASIC PRINCIPLES ఔ



 もしあなたが完璧にきれいで新鮮で健康に良い果実や野菜を育てたいと考えているのなら、あなたの頭の考え方を完全にひっくり返すことから始める必要があります。50~60年さかのぼって始めることです。

 しかし、私はもちろんガーデニングを中世暗黒時代のやり方に戻して現代の科学技術に背を向けるようにと言っているのではありません。ただ、ガーデナーに役に立つ栽培技術の多くの進歩が成し遂げられてきていますが、私たちはひとつの大きな過ちを犯してしまったのです。

 私たちの過ちとは、大規模な農場や農家の方法に盲目的に従ってしまったことです。彼らは長いまっすぐな畝(うね)にして育てるのが効率的と考え、私たちも同じようにし、彼らが有毒な殺虫剤を散布するのを見て私たちも従いました。さらに、彼らが新しい品種を作り出したとき、私たちもそれを栽培しました。そして、私たちの栽培条件と彼らのが異なること、私たちの問題点が異なること、私たちの必要としていることが異なることさえも気づくことなく、そうしていたのです。いったんそれらが間違っていたと分かれば、思っていたより簡単に自分の方法で栽培もできるのです。



条播(じょうは)栽培 Growing in rows

 古代の農民はすべての作物を大きなブロックとして栽培することを始めました。彼らは単純に種を手で振りまいて、落ちたところで種は芽をだしました。労働力のコストが問題にならない時代にはこのシステムは完全にうまくいっていました。トウモロコシの草取りは手で行い、低賃金の小作人たちがターニップ畑をさっさと耕していました。大いに満足できるような方法ではないにしろ、それなりに十分なものでした。

 革命は種まき器とともにやってきました。手で種をまくのでなく、器械でまっすぐな直線状に種をまいて、その後の馬での耕作を可能にしました。そのほうが人手で耕すより速く、また競合が少ないため収穫量も多いのでした。

 種まき器は現代まで使われていますが、3ミリ間隔で種を1個ずつまいていくことができる程に洗練された新しい正確な種まき器に代わっています。つまり、効率的な長い直線状の畝(うね)に植えつける条播栽培が現代の私たちの栽培様式となっています。何世紀もの間、農場規模の栽培ではこの方法が最も効率的であったのです。しかし、それがガーデナーたちにとっても最良の方法でしょうか?私は違うと思うのです。

 狭い菜園ではそれは信じられないくらい無駄な方法です。畝の間を鍬を持って歩くには30㎝ぐらいの間隔が必要ですが、実際にはその半分程度の間隔でも十分に作物は育ちます。ラディッシュを間隔を30㎝もとって2列に植えたのを想像してみて下さい。完全にスペースの無駄づかいです。

 何年も前から私はこの条播栽培と、古い時代のガーデナーたちのもっと密に畑に作物を植えたときの収穫量を比較してきました。するといつも収穫量は古い時代の方法が2倍ぐらい多く、時には3倍に達しました。

 もちろん、欠点もあります。第一に、時間がかかります。それが農家がしようとしない理由です。しかし、ガーデナーには時間がありますし、実際私たちが最初に庭づくりを始める目的は植物を育てるのに時間を使うことなのです。いずれにしても、庭が小さければ庭仕事がふえるのもわずかの時間です。あなたが物置小屋から鍬を出してくる間に、私は手を使って仕事の半分は終っていることでしょう。

 もう一つの「問題点」は、肥料や有機物を沢山菜園に入れ込む必要があるということです。狭い土地から沢山の収穫を得るためには、土をかなり肥沃な状態に保つ必要があるわけで、たくさん投入も必要なのです。しかし、投入した分たくさんの収穫を得られることを忘れないで下さい。最後には楽勝なのです。

 畝にまっすぐ直線的に栽培するのに比べて、区画にまとめて栽培する利点が他にもたくさんあります。例えば、畝全長を完成しようと種をたくさんまきすぎてしまう罠にはまって、ご近所のみんなに食べてもらうことに終わるようなことがありません。一度に小さな区画の世話をすることがとても自分の励みになること、そして庭仕事がちょうどよい時間で終わることにあなたは気付くでしょう。やっているうちに自分で以上のようなことに気付くはずです。



化学薬品(農薬)の使用 Using chemicals

 昔の医師がヒルを使って血を吸わせるのが一般的な万能治療法だったことを私たちがとても信じられないように、百年後には私たちのひ孫の世代が今私たちが化学製品を使っていることをきっと笑うだろうと私は思っています。そのときひ孫たちが「昔の人たちが野菜を毒に浸したあと食べていたのをちょっと想像してみてごらん。彼らはそれが毒だと知っていてやっていたのさ。正気とは思えないよ」といっているのが私には今から聞こえています。

 農家が手に余って化学薬品を使うのを私が非難できるかは定かではありません。彼らはやむを得ずやっているのでしょう。しかし、ガーデナーがつかうのは正気の沙汰ではありません。

 もし農家が広大な畑にキャベツを栽培していて害虫の芋虫が発生したら、たぶん殺虫剤を散布する以外に方法はないと思います。でも、せいぜい数十個程度を栽培をしているガーデナーの場合は、見回って捕まえればよいことです。しかしながら、ここで私が紹介する栽培方法の驚くべきことは、そもそもキャベツに芋虫がつかないことなのです。

 農業で病害虫の被害が大きくなりやすい主な原因は大規模な栽培法にあります。まず第一に、20エーカー(8ヘクタール)のキャベツ畑は、周辺地域のモンシロチョウ全部をひきつけてしまいます。数マイルも先からキャベツ畑めがけてやってきます。豊富に餌があるために、モンシロチョウは次から次に沢山の卵を産みつけるのです。

 これに対して、美しい菜園のガーデナーは、いろんな花の中にキャベツを隠してしまい、モンシロチョウには見えなくなるため、彼らに見つけられなくするのです。更に、いろいろな植物を一緒に植えるので生物の自然なバランスがつくられます。木々は鳥たちを呼び、鳥はキャベツを見つけた芋虫を掃除して幸せになります。そのまえにオサムシ(害虫を食べる昆虫)にみつかって食べられることもあります。



歓楽の道 The primrose path

 私が紹介している方法はまったく「新しい」菜園づくりへの道で、農家や大規模農場の方法とは完全に決別するものです。そして思ったとおり、新しい方法がずっとうまく行くことを私は証明しました。

 あなたが私のこの方法でうまくやりたいと思うなら、中途半端はしないように注意して下さい。とことんやるか、あるいはまったく思い悩まないことです。この点がほとんどのオーガニックの専門家と私が異なる点です。

 オーガニックのガーデナーの皆さんが、たくさんの種類の化学薬品は庭で「安全に」使えますと言っています。植物由来であることや短期間で消失することをその根拠としています。しかしこの主張はどう考えても理論的とは思えません。

 植物由来であるからといって決して実験室で作られたものより安全だということにはなりません。(強力な毒であるアトロピンは植物由来ですし、ヘロインもまたそうです。)また短期間で消失するにしても、芋虫を駆除するということは、ミツバチも、ハナアブも、テントウムシといったあなたにとって大切な味方の益虫もまた犠牲になるということを意味します。

 そうではなく、唯一の道は自然との協調です。自然な方法で病害虫を食い止めるのです。物理的な方法は別として、私は皆さんが強く健康な植物を育てるようにして病害虫の攻撃を振り切るようにすることを薦めます。さらに、害虫の駆除をしてくれるいろいろな鳥や益虫が住みやすい環境をつくることにも勤めるべきでしょう。

 ですから、まず単一作物の栽培という考えは捨てて小さな区画で食用作物を植えることから始めましょう。これには例えばジャガイモのように、ちょっと慣れが必要な作物もあります。ジャガイモは収穫時に掘りあげやすいように一箇所にまとめて植えつけるのが普通です。しかし、もし一ヶ所に植えるのを3~4株ぐらいにしておけば、収穫時期が来たら1週間程度で収穫は終わり、何か他の用途に使えるちょっとした空間ができます。ところが、大きな区画全体にジャガイモを植えていたときには、そこを何かに使うには全部の収穫を終えるのを待つ必要があったのです。だから、少しずつ植えるのは収量を増すひとつの方法でもあるのです。実際、春から夏の初めにかけて、花壇にスペースが空くたびにジャガイモをそのつど植えつけている田舎のガーデナーの女性を知っています。そうやって彼女は冬の初め頃までずっと美味しい掘りたてのジャガイモを続けて収穫しています。

 レタスのような連続して収穫していく野菜では、小さな区画での栽培にぴったりです。一ヶ所に2週間分ほどの分の種をまいたり植えつけたりして、2週間したら他のところにまた種まきをするのです。この方法だと、土地は持続的に利用されて、そして必要以上の栽培にはなりません。必要な量というのは慣れが必要ですので、最初のシーズンは何の種をいつまいて、いつ頃どれぐらい収穫できたかを日記に記録して下さい。2年ほど経てば自分のねらいどおりにできるようになります。

 野菜の周りには、あらゆる種類の花を咲かせます。低木の花、草花、球根性の花、そしてバラなどです。これらは食用の植物をカモフラージュしてくれ、そして害虫を食べてくれる昆虫類をひきつけてくれます。弱気になって殺虫剤を噴霧したりしなければ、彼らはきっとあなたの代わりに働いてくれます。

 借り方に理解してもらうべき要点があります。あなたの畑を監視してくれる生き物が自然なバランスをつくってくれて、特定の種類が問題にならなくなるのには多少の時間がかかります。最初の年にはほぼ必ず病害虫が発生しますが、次の年からは次第になくなっていきます。ただ、そのうち完全に病害虫がなくなるだろうと期待してはいけません。完全にはなくならないのです。

 もしあなたがキャベツの葉の一枚に穴があったら投げ捨ててしまったり、リンゴに鳥のつついた穴があったら処分したりするような、食べ物に神経質な人だとしたら、あなたの選択肢は農場でやっているように菜園全体に化学薬品を常に散布する方法しか残っていません。私なら鳥がつつくほうを選びます。

 しかし、もしあなたが弱気になって化学薬品を使用'しなくてはならない'と決心したら、また再開したらよいのです。そうすれば、あなたは悪者だけでなく良い子たちも殺してしまい、あなたの味方を破裂させ、世界に反しているのはあなたと噴霧器になるのです。



肥沃さ Fertility

 販売目的の栽培でたくさんの殺虫剤が必要になるもう一つの理由は、作物が柔らかく育っているからです。新聞を読めば誰でも分かるように、農家や大規模農場では多量の窒素肥料を、主にアンモニアの硝酸塩または硫酸塩として使用しています。窒素は葉や茎を急速に成長させる栄養素で、使えば使うほど収穫量も驚くほど増加するのです。(過剰な窒素分が排水経路に入り込み、最終的に川に流れ込んで私たちの飲料水を汚染している側面もあるのですが、ここではこの話は止めておきます。)しかし、その窒素が無理やり作物を成長させるため、柔らかく成長して害虫や病気に攻撃されやすくなり、抵抗力を弱めてしまうのです。

 オーガニックな方法では、植物に栄養を与えるのではなく、土壌に栄養を与えるのです。天然の肥料は植物の栄養分をより長期にわたって放出する傾向があり、植物が必要とするときに根から吸収できる場所にとどまっているのです。オーガニックな方法では無理やり栄養素を吸収させないので、より短く、より強く、そしてより健康であり続けるのです。

 しかし私の提唱する集約的なシステムでは土壌を高いレベルで肥沃さを保つ必要があります。たくさんの有機肥料が必要で、もしそれが不足する場合は、廃物マッシュルームコンポストやその他のかさ高の有機物を使い、濃縮した有機肥料も併用する必要があるかもしれません。堆肥場が必要なのは言うまでもありません。



美しさ Aesthetics

 もちろん、もっとも大事な要件は庭は美しく、そして余暇を過ごす場所であるべきだということです。あなたが自分で果実や野菜を育てるのにとても熱心だとしても、自分の庭を薄汚い畑にはしたくないはずです。そしてこの方法の素晴らしいところは、それがとても素敵に見えるということです。

 この方法のルールは、すべてのものが庭で生産的であるだけでなく、美しくあるべきだというものであるべきです。そしてそれは、思ったほどには不可能なことではないのです。美味しくて見栄えのする野菜の品種がたくさんあります。退屈な壁やフェンスや花壇の縁取りも、果樹をきれいな形に誘因・剪定して育てることで美しいものに変えることもできます。害虫を減らし授粉に役立つ役割をする花々が、一年を通して色と香りで菜園を満たしてくれるでしょう。