第10章 害虫、雑草、病気の管理: 物理的な害虫対策

第10章 害虫、雑草、病気の管理 CONTROL OF PESTS, WEEDS AND DISEASES


ఔ 物理的な害虫対策 PHYSICAL PEST CONTROLS ఔ



 多くの害虫は物理的な方法で作物から隔離することができます。ネットを張って鳥から作物を守る方法はすでに紹介しました。しかしこの方法は悩ましいこともありえます。というのは、鳥がネットの中に入り込んで外に逃れようと暴れて、網目にからまってしまうのを見ることになるかも知れないからです。ですから、ネットはピンとしっかり張って地面に固定し、鳥が入り込む入り口をなくすようにしましょう。

 黒い糸もときどき勧められています。確かに役に立ちますが、鳥には見えないのでやはり同じような危険があります。それが役に立っている理由でもあります。見えない黒い糸に羽が当たってしまい、鳥は怖がってしまうのです。

 案山子や光る鏡なども短期間は効果がありますが、鳥たちは速やかに慣れてしまいますから、いつもあちこちに移動させなくてはいけないでしょう。

 防虫ネットは鳥や飛んでくる昆虫から作物を守るのに理想的な方法ですが、欠点があります。それは、とても見た目が悪いことです。装飾的菜園では小さいものしか使用しないので、悪くないかもしれません。とは言え、やっぱり震える手でひげを剃った男の顔のように見えるかもしれません。

 この問題を解決するためには、私は小さな穴のあいた緑色のポリエチレンのシートを使ってきました。それほど見かけも悪くなく、まわりの緑の葉にうまくまぎれてくれるのです。植物に当たらないようにうまく支えてやるとより効果的です。

 欠点は早春の霜からは守ってくれないことや、真夏には温度が上がりすぎることがあることです。涼しい地方では完璧な方法です。


キャロットフライ Carrot-fly

 キャロットフライ(ニンジンバエ)の幼虫はニンジンの根に茶色のトンネルを掘り、ひどい時には枯らしてしまいます。ニンジンのまわりにポリエチレンのバリアを置いてやると、ある程度は防げます。メスの成虫は地面すれすれを飛びながら目当てのニンジンを探します。しかしバリアがあると上へ飛び上がってニンジンを見失うのです。信じられないようなうまい話だと思われるかも知れませんが、私が試してみた結果はおよそ80%被害を減らすことができました。ですから必要な量の2割増しで栽培すればそれで済みます。実際にこの方法は装飾的菜園でよりうまく機能します。なぜなら、ニンジンは長い列に並べて植えずに小さな区画に栽培しますからバリアで囲みやすいからです。

 バリアをつくる方法は、6本の棒をまわりに差しこんで、45cmの高さの透明のポリエチレンシートを取り付けてつくります。上を覆う必要はありません。ニンジンを植えているスペースの直径が30cm以下であれば、まったく大丈夫だと思います。この方法で私はうまくいったので、硬いプラスチックを丸めて円筒をつくってみようと今やってみています。もう棒は必要なく、作物の上から円筒をさっとかぶせるだけです。

 ニンジンはずっと保護している必要はありません。虫の卵は年に2回、最初に5月の下旬、次が8月から9月です。5月末より前に掘り上げるのであれば何の心配もありません。6月中旬に種をまいて8月中頃に掘り上げる場合も概ね免れます。




キャベッジルートフライ Cabbage-root fly

 キャベッジルートフライ(キャベツバエ)の幼虫(ウジ)はキャベツ、カリフラワーなどアブラナ科野菜の根を食害します。野菜がしおれてきて、最後には枯れてしまいます。つかみ上げると根がほとんどなくなったりしています。

 メスの成虫がキャベツの茎のすぐ横の土の表面の直下に卵を産みつけます。そして卵から孵化した幼虫はすぐに食べ始めます。もし卵を産み付けられないようにすれば、よその庭に飛んでいって産卵するでしょう。産卵をさせないためには、ガーデンセンターからフェルトの円盤を買ってくるか、あるいはカーペットの下に敷くフォームラバーから自作することです。15㎝四方の正方形に切って中央まで切れ目を入れて中央は小さく十字に切れ目をつくって野菜の茎にぴったりフィットするようにします。大切なのは「ぴったり」つくることです。もし隙間があるとハエが入り込んで産卵します。フォームラバーのもう一つの利点はオサムシの隠れ場所になり、キャベッジルートフライの幼虫を食べてくれることです。


フユシャク Winter moths

 果樹にいるフユシャクや他の昆虫はグリースを帯状に幹につけたり特殊なガンを使ってグリースを塗ったりすれば捕まえられます。この方法は羽のない昆虫には有効で、彼らはこのネバネバしたバリアを超えることはできず、木の幹を這い上がっているときに捕まってしまいます。


キンケクチブトゾウムシ Vine weevil

 温室の中のキンケクチブトゾウムシもこの方法で捕まえられます。これはとても厄介な害虫で、植木鉢の土の中に卵を産みます。卵からかえった幼虫は根を食い荒らして植物を枯らします。駆除もなかなかむずかしいのですが、有機栽培のガーデナーは完璧な答えをもっています。メスの成虫は羽がないので植木鉢の置いてある台の上に登るには台の脚を這い上がらなくてはなりません。台の脚にグリースを塗っておけばたくさん捕まえられます。グリースで服を汚したくない場合は水を入れた容器に脚をつけておくと良いでしょう。


モモ縮葉病 Peach leaf curl

 この病気は葉に赤い火ぶくれをつくり、葉は黒くなって落ちてしまい、植物を弱らせるカビによる病気で、モモやネクタリンをうまく守る方法はあります。カビの胞子は雨で運ばれてきますので、1月から6月までの危険な時期に雨に濡らさないようにしてやればよいのです。濡らさないというのは大変なようですが、もし塀や策に誘引してあるなら、その上に雨除けをつけるのはそう難しいことではないでしょう。家の軒で木が守られる場合もあります。

 もしそれができないなら、植木鉢に矮性の品種を植えて6月まで家の中で育てる方法もあります。 矮性の品種は私の経験ではこの病気にかかりやすいので、屋外で育てるのは適さない気がします。でも、鉢植えで育てれば病気は完全に防げます。