第2章 デザインとプランニング: 私自身の庭


第2章 デザインとプランニング Design and Planning 


ఔ 私自身の庭 MY OWN GARDEN ఔ



 私がつくった美しい菜園のサイズは30フィート×50フィート(9×15メートル)です。これは一般的な住宅の庭よりは少し広いですが、すこし贅沢な広さにしたことを弁解はしません。私は選択を迫られたのです。一般的な庭の広さを反映して小さな庭をつくるべきか、あるいはよりバラエティーに富むアイデアを紹介するために少し広い庭にするべきか、という選択でした。私は後者を選択したのですが、それでもスペースの狭さにいらだつことになりました。そしてここで重要な教訓を学んだのです。

 すでに書いたように、私はまず紙に庭の境界を描き、必要なもののリストを作り、すべての要素を組み込んでいきました。しかし、どうもたくさんのものを詰め込みすぎたようで、庭の地面に印をつけていくと、熱心さが行き過ぎたことがはっきりしてきました。すべてを入れ込むと、ひどくごちゃごちゃしてしまうのです。布地に見合った裁断をせざるを得ませんでした。

 狭いスペースにたくさんのものを詰め込もうとするのは大きな間違いで、しかもよくやりがちです。私もそのルールを知ってはいたのですが、それでもやりすぎてしまいました。スペースが狭いほど、デザインはよりシンプルにしなければならないことをよく覚えておくのは大切です。

 そうは言っても、私たちの多くが最初につくる3つの木製のフェンスがもつ四角い閉所恐怖症的な効果をマスクすることは確かに必要です。目を喜ばせるためには、これらの直線はソフトにして「曲げ」なくてはなりませんが、それは植物を使って行うのです。そこではたぶん少しやりすぎる余裕もあると思いますし、、あなたに剪定や誘引などをする時間が少しあるようならば、その効果はいつも心地よいものでしょう。でももちろん、いちばん大事なのは基本的なレイアウトの計画です。


パティオ The patio

 この庭では、家の裏側が南を向いているので、そこがパティオを設置する最適な場所です。そこではお天気の良い夏の朝はたいてい鳥やミツバチたちと一緒に朝食をとることができるでしょう。その一角にバーベキューコンロを置けば、友人とランチを楽しむのに便利ですし、また夕日が夕食前の半時ほどのリラクセーションを気持ちのよいものにしてくれるでしょう。

 しかしもっと重要なことは、そこは徒長しないしっかりした苗を育てるために春に十分な日光を集めるコールドフレームの理想的な置き場だということです。適度なスペースを舗装のために割り当てることに後ろめたさを感じる必要はありません。というのは、この種の庭では花壇に植えつけられるのを待っている苗や植物を置いておく硬い地面がいつも必要だからです。

 フェンスのすぐ近くは石板を敷いていないのは、永続的な植物を植えるためです。あなたがフェンスでの生産性を高めたいという場合はこれは大変重要です。というのは、永続的な植物はコンテナでは大きく育たないからです。特にこれが重要なのは南に面した壁で、桃やネクタリン、アプリコットなどのエキゾチックな果物を育てられるのはここしかありません。

 舗装用の石板は正方形または長方形ですから、パティオは直線的に設計するのが簡単です。ただ、直線的にすると「硬い」、整形式の印象が強くなるのが欠点です。更に、庭を直線が横切ると、パティオとそれ以外の庭の部分を完全に分離してしまい、庭が実際より狭く見えてしまいます。

 私はこの問題を解決するために円形の芝生を使い、これを直線的なパティオに食い込ませることにしました。これによってパティオとそれ以外の部分が効果的に結ばれます。もちろん、そのためには石板を円弧を描くようにカットする必要が出てきます。難しそうに聞こえますが、しかし石切り用の電動ノコギリを借りてきて使用すれば実際には簡単です。

 もしあなたの家が南向きでない場合は、どこか別の舗装した所に座ろうと思うでしょう。すでに述べたような理由で、日当たりの良い場所が適することは間違いありません。

 舗装に用いる材料にはたくさんの種類があります。ガーデンセンターを2ヶ所ほど訪ねればたくさんの選択肢がみられるでしょう。このタイプの庭での私のお気に入りは、古い建物の床や舗装に用いられているすばらしい古いヨーク石のような自然石です。中古品の石板がまだ入手可能で、昔からずっとあったような感じに見えるように簡単にできます。しかし残念ながら、古びた自然石は一般的にほんの少しの広さでもとても高くつきます。新しい石板は問題外です。しかし、コンクリートでつくられた素晴らしいイミテーションもいくつかあって、専門家の眼を除けば十分に人目をごまかせるものもあります。


園路 The paths

 この庭を耕す特殊な方法のために、通常の庭よりも多くの通路が必要になります。理想的にはそれぞれの区画に踏み込むことなくその区画のいちばん後ろまで手が届くようにすべきです。あるいは、区画が二つの通路の間にある場合には、中央部まで手が届けばいいでしょう。実際にはインフォーマルな庭のデザインではこれが常に満たされるのはむずかしいですが、このような場合でも区画に踏み込まずないで管理する方法はあるものです。これについては後で明らかになります。

 もちろん問題は通路がパティオと同じように硬く、人工的に見えてしまいがちだということです。それは私たちができる限り全体を植物で埋め尽くすように努力してもそうです。結局、それがガーデニングというものです。ですから、古き良き妥協に戻るのです!

 私の庭の通路は一辺が18インチ(45㎝)の正方形の、パティオで使用したのと同じ踏み石でつくりました。一般的に、たくさんの種類の素材を混在させないのが賢い方法で、そうしないと「ごちゃごちゃ」した感じになってしまいます。石板は3インチ(7.5㎝)の間隔をあけ、広がりやすい植物を植えるためのスペースを十分確保しておきます。植物は短期間で石板の一部を隠すようになり、縁を和らげます。通路を歩くだけで適宜剪定がなされ、歩くための隙間を確保できますが、もし茂りすぎたら時々少し切り戻す必要も出てくるでしょう。

 私は石板の間は小石で埋め、植物のまわりの排水をよくしています。1、2インチの厚みで敷くと雑草予防にも効果があります。とても魅力的に見えますから、もし予算が足りなければ石板は使わずに砂利を使ったらよいでしょう。当然、通路は木の板で縁取りして砂利が散らばらないようにしなくてはいけませんが、それでも費用は劇的にカットできるでしょう。砂利の部分にも植物は植えられますから、茂りすぎたら適当に剪定します。

 しかし、中央の通路は他の通路とは異なり、庭全体を形づくるような強い特徴を持つ必要があると思います。そして植物で隠されたりカモフラージュされたりせずに、それ自体が明確な特徴を形成するようにするのです。使用する素材も目立つ必要がありますが、暖かく周囲の植物と調和も大切です。私はそれでレンガを選びました。

 プランでは通路は角から角へとカーブして同じ素材の六角形で終っています。しかし、区画に植物が植えられると、地上からみる場合には通路は植物の向こうにうまい具合に見え隠れして、実際より広く庭を感じさせます。通路を歩いていくと、オズの魔法使いに出会いそうに感じるでしょう。

 プランをみてみると、庭を通路で埋めないと、踏み込まないでボーダーの中央まで手が届くようには一見思えません。横の通路は細く、フェンスに沿った2つのボーダーは幅がわずか2フィート(60cm)なので容易に届きます。他のボーダーでは、二つのアプローチが必要です。

 植物を植えつけるときにボーダーの中心に永続的な植物、つまり樹木や低木を植えましょう。そうすればボーダーの中央には剪定とマルチや肥料を入れるのに年に2回ほどしか用はありません。そのほかの場所では、飛び石を一つ二つ置いておくのです。私は丸太を使っていますが、夏に植物が茂ってくるとすっかり見えなくなります。もちろん戦略的に置く必要があり、年によってあるいは植えるものによって、置く位置も変わってきます。ですから、最初のデザインに実際に含めておく必要はないのです。実際に植物を植えるときに、必要な場所に置けばよいのです。


芝生 The lawn

 たぶんあなたは芝生について慎重に考えることでしょう。芝生は、芝だけしか育てられず、植えられるのを待つ植物を置いておくこともできない、非生産的な場所です。生産性という点から言える最良の点は、芝刈りによって優れた常に新しいコンポストを得られること、ある種の野生動物にとって住みよく感じさせること、ぐらいでしょう。


 私は庭に芝生を加えましたが、それは好きだからです。芝生は花壇の優れた前景になり、スペースを感じさせてくれ、その上で何もせずにのんびり過ごすことができる最もやさしい素材であり、こどもの遊び場にもなります。もしあなたが芝生が欲しいと思うなら、小さな芝生をつくってクロックゴルフをしたり、血圧を上げて友達をなくすあのクリケットをしたりしてもよいでしょう。

 夏の間は最低週に1回は芝刈りが必要で、狭くても芝刈り機やエッジ用のはさみは必要であることに注意して下さい。

 別の方法として、ワイルドフラワーの芝や、グランドカバーの植え付け、なども考えられ、後述の大きな庭のプラン(p.43)で実践しています。

 芝生はどんな好きな形にもできます。私は円形の芝生にしましたが、それはフォーマルなパティオとその他の庭のまったくフォーマルでない部分とをうまく連結するのによいだろうと思ったからです。芝のエリアの場所を決めるときには、できれば日当たりの良い場所にもってくるようにしてください。日陰の芝は苦闘し、苔の侵入と張り合うのはむずかしいようです。特に水はけの悪い硬い土の場合はそうです。もし日陰に芝を植えるなら、芝は少し伸ばし気味で放置して芝刈りは月に1度程度にすることです。


パーゴラとバラのアーバー(ドーム型アーチ) The pergola and rose arbour

 小さな庭では面白い形を作り出すのに十分なスペースの余裕がしばしばありません。だからあなたはロックガーデンや酸性を好む植物の花壇など小さなものをつくることになるかもしれませんが、自然な傾斜がないと平たい場所では行き詰まってしまうでしょう。そしてそれは最も面白くない展望です。その解決法は、植物を使って遠景の見通しをよくすることです。

 樹木は明らかに助けになりますが、小さな庭では一本か二本の小さな木のスペースしかないでしょう。もう一つの方法はつる性植物を利用することです。フェンスや壁などでは美的でしかも生産的なつる性植物や壁際の植物などの効果を十分に発揮させることができるでしょう。果樹にはたくさんの種類があり、あまり場所をとらずに収穫を増やすことができ、見た目にも美しく、フェンスで囲んだ四角い形を隠してくれます。そして、パーゴラやバラのアーバーのような自立する構造物で補足することもできます。

 これらはいずれも有能な便利屋さんならつくるのも簡単で、あなたも加工済みの部品のキットを買えば自分で組み立てることもできます。

 パーゴラは小道をまたいで並ぶ木製の連続したアーチです。私の庭では美しいつる植物や、ブドウのような実をつける植物、ベニバナインゲン、さらにペポカボチャやキュウリ、カボチャなどを育てるのにパーゴラを利用しています。あなたが魅力的な品種の野菜や果物を選ぶなら、美しいつる植物と同じように、どこからみても夏のディスプレイとして素敵にみえ、しかもより長期間楽しめることでしょう。そして、あなたも想像できるように、明るい黄色のラグビーボールの大きさのカボチャや、縞模様のペポカボチャが眼の高さにあると、とても話題となることでしょう。

 バラのアーバーは庭の主要なフォーカルポイントです。わずか1年で花に覆われた山をつくりだし、それはとても人目を引き、最も庭の奥へと人の目を引きつけ、そのために庭を広く錯覚させる効果があります。そしてあなたはレンガの道を歩いていってアーバーの中の日陰の楽しみを見つけたくなります。たくさん植物を植えれば、アーバーはプライベートな小さな隠れ家となり、あなたは本をもってその中に引きこもることができるでしょう。最近では、この種のセラピーがもっと望まれいると私は思います。

 アーバーは実用的かつ審美的な理由から形は八角形です。正方形や四角形のほうが実際に作る際には簡単かもしれませんから、もしあなたが八角形が自分の手に余ると思えば簡単な形にするのを止めはしません。しかし八角形のほうがずっとエキサイティングですし、より多くのつる性植物の支えとなれると思います。たいていのガーデンセンターで購入できるパーゴラのキットをもし使えば、組み立てるのも全然むずかしくはありません。しかし、私がそれを採用したおもな理由は、温室の形とよく反響し、全体のレイアウトに一定の結合をもたらしてくれるからです。

 バラのアーバーには私の道楽があります。園路を歩いていくときには、じらすようにちょっとだけ見え隠れするだけですが、いったんアーバーに入ると私が今までにみた中で最も美しい腰掛と対面することになります。それはエドウィン・ルチェンスのデザインで、その値段は私にはちょっとした大金でした。しかし、2年分の手作りの果物と野菜の価値でだいたいそれをカバーできるだろうと試算しました。


温室 The greenhouse

 温室は高価な贅沢と思ってはいけません。野菜や果物、花などを自給自足しようと思えば、是非必用になるものです。温室なしでは、苗はガーデンセンターで購入することになるので、アルバート・アインシュタインにも長期間でどれくらい費用がかかるか分からないことでしょう。

 私の試算では、少量の堆肥や肥料、コンテナなどの購入や温室の暖房、それに自家製の花や野菜の苗などの費用は、苗をすべて購入するのに比べて、悲観的にみても、1/3の費用で済みそうです。さらにこれらに加えて、トマト、キュウリ、ピーマン、ナス、レタスなどの野菜のほか、エキゾチックなイチジクやブドウやオレンジなども育てることができるようになり、温室がとても経済的なものだと理解できるでしょう。そして、言うまでもなく、そこから創造の喜びを得ることでしょう。ゼロから美しい花を育てたり、素敵な野菜の料理や美味しい果物をつくることよりも満足感を得られることを私は知りません。それはどうかんがえてもレストランの食事より素敵で、しかもずっと安くつきます!

 八角形の温室は庭に大きな楽しみを添え、四角の温室より大きな利点、すなわち、どの方向から見ても同じように見える利点があります。狭い庭でもほとんどどこにでも設置できるのです。

 温室はアルミ製ももちろんありますが、私はシダー材を選びました。金属製のものより少し高いですが、アルミ製のように庭で目立たずに庭に溶け込んでくれます。

 アルミ製の温室のほうが日光をより取り込むことができるので好ましいと主張する一派もあります。冬に苗を育苗業者のように育てる場合にはこれも正しいと思います。確かに冬の育苗には少しでも沢山の日光を利用するのが重要です。しかしたいていのアマチュアのガーデナーは、日光が増えてくる2月、あるいは3月になってからしか種まきをしないでしょう。五月までにはガラスに覆いが必用になりますし、あれこれ考え合わせれば、最初の購入時の費用が安いこと以外にはアルミ製の利点はあまりないように思われます。

 庭に温室を含めるとすれば、コールドフレームも必要となるでしょう。暖房した温室で育てた苗は、庭に植えつける前に寒さに慣らす必要があります。それにはコールドフレームが最適です。完成品も安く買えますし、自分で作るのも簡単です(p.63)。

 コールドフレームの設置場所は一ヶ所に決めないことを勧めます。移動が容易ですから、日光をもっともよく利用できる場所に運んで使えます。例えば春には日光が苗を丈夫に育ててくれるような南向きのパティオに置くでしょうし、夏にはコンポストの山の隣の少し日陰気味のところに移動すればメロンやキュウリなど明るい日陰を好む植物を育てられます。


池 The pool

 すでに述べたように、鳥や昆虫のための水場なしではオーガニックな庭は完成しません。鳥や昆虫に加えて、カエルや小さな哺乳類も池を使って、そのお礼に害虫を退治してくれるでしょう。

 小さな庭には小さな池しか作れませんが、それで構いません。一杯水を満たしておくなら、小さな池で十分です。私の庭の池は直径2フィート(60cm)の半筒状で、ボーダー花壇にすえつけています。池の周りの植物が茂ることで、その鋭い縁を見えなくしてくれます。わずか数ヶ月で池はずっと昔からあったかのように見えてきます。

 整形的でない池は、プラスティック製のものやブチル製の膜を使えば作るのも簡単です(p.60)。どんな形や大きさにでも作れますから、どんなデザインの庭にもうまく合わせることができます。大きな庭のデザイン(p.43)に整形的でない池を加えています。


多用途エリア The utility  area

 どの庭でも作業スペースを見込んでおく必要があります。堆肥を混ぜたり、天気の良い日にポッティングベンチ(作業台)をすえつけたりする場所です。誰でも保存している役に立ちそうな廃品の収納スペースも必要ですし、天水桶や堆肥の置き場も必要になるでしょう。

 私は死角になって見えにくい温室の奥の三角形のスペースをコンクリート張りにしています。実際、すべてをきちんと整頓しておけば、自作の堆肥置き場やコールドフレームも見かけは悪くありません。もし本当に見た目が悪ければ、作業スペースを完全に隠してくれるような、つる植物を絡ませたトレリスのスクリーンを立てることも難しくはありません。


コンテナ Containers

 この庭のように小さな庭では、すべてスペースを使うものは美しくなければなりませんから、コンテナ(植木鉢)も慎重に選んでいます。最初の年は値段が安いのでプラスチック製のコンテナを使いましたが、少しずつお金を貯めたり、クリスマスに欲しい物をほのめかしたりして、プラスチック製のを少しずつ魅力的なポットに替えていきました。とはいうものの、とても良いプラスチック製のコンテナもありますし、園芸通の気取り屋と烙印を押されそうな危険があるのも承知していますが、やはりプラスチック製のものは素焼きや石製あるいは木製のものには足元にも及びません。

 夏にはもちろんコンテナは花の咲くあるいは果実をつける植物が茂るのでポット自体は眼に触れにくいのですが、冬になると球根植物やウォールフラワーやパンジーなどが植えられていてもポットの側面はすっかり見えてしまうので、ポットの材質が重要になるのです。何も植わっていなくても、彫像のようにそれ自体が美しく見えるべきです。私はろくろを使って作られた素焼きのポットを温室のトマトやメロンなどを育てるのに使ったりしていますが、それも見た目が素晴らしいからという以外の理由はありません。

 注意点がひとつあります。テラコッタのコンテナに決めたら、それが防霜性が保証されていることを確かめてください。少し高くはなりますが、何年間かの保証付きのものもあります。スペインやメキシコ製の素焼きのポットは魅力的でも避けた方がよいでしょう。見た目は良いですが、イギリスでの最初の冬を無事には越せないでしょう。