第5章 装飾的植物: 池や沼地の植物

第5章 装飾的植物  DECORATIVE PLANTS



ఔ 池や沼地の植物 POOL AND BOG PLANTS ఔ




 池は、その大きさが半エーカーだろうとビア樽半分だろうと、小さな自己完結型のエコシステムであり、うまく機能するためには庭の他の場所と同じように生物のバランスが重要です。

 小さな池は特に庭の失敗作になりやすく、水をいれてわずか数日で色がぞっとするような緑色に変色し、まもなく腐ったような悪臭を放ちはじめます。美しい庭には不要なだけでなく、多くの野生生物にとっても魅力的ではなくなります。そんな所を好む生物は水を緑色にしてしまう藻類たちだけです。正しい種類の植物を育てることが大切で、そうすれば昆虫類やその他の動物たちが棲むようになります。導入する必要のある動物もありますが、多くは自分で来てくれます。


必要な植物 Necessary plants


 よく計画された池はとても美しいものです。しかし多くの植物は美しく見えるためにだけ植えられているわけではなく、果たすべき役割をもっているのです。

 第一に、池の水に酸素を供給することを主な目的としたものがいくつかあります。酸素は池で生きる動物や植物が健やかに生きるためには欠かせません。第二に、水をどろどろのエンドウのスープにしてしまう生物の繁殖をさまたげる役割を果たす水生植物です。


酸素を供給する植物 Oxygenating plants


エロデア・クリスパ Elodea crispa

 緑色のたなびく水草で、近縁のカナダ藻とよく似ていますが、成長はこれよりゆっくりです。そのため小さな池に向いています。カナダ藻 E. canadensis では年に1、2回は強く間引きが必要となるでしょう。池の底の土に植えつけられたら理想的です。

マツモ Ceratophyllum demersum

 マツモは魅力的な羽状の葉をもつ水中の植物で、管理も容易です。植えつける必要はなく、池に投げ込むだけでよいのです。

水生植物 Aquatic plants


 池の水を緑色に変えてしまう藻類は日光で育ちます。光合成には日光と、水に含まれるミネラルが必要です。もしこれらを制限できれば、藻類を取り除くのに大いに役立つでしょう。酸素を供給する植物や水生植物はミネラルを吸収することで減らしてくれます。水面をおおう植物で水面への日光をさえぎることも可能です。この目的にかない、しかも美的な価値の高い植物はスイレン Nymphaea です。すべての池にスイレンは必要です。しかし品種の選定には十分な注意が必要です。それは池の深さに関係し、浅いところに適したものと深いところに適したものがあります。


スイレン Nymphaea

 植えつけるときには池の底の土に根を差し込むのが理想的ですが、もしそれができない場合はポットに植えつけて適当な深さにポットを沈めます。

池の深さが15cm以下の場合: ヒツジグサ Nymphaea pygmaea は中央が黄色で白い花びらの小さなスイレンです。'Helvola'という品種はやわらかい黄色の花としっかりした性質でお勧めです。

池の深さが23~60cmの場合: Nymphaea 'Froebelii'は古くからある人気の品種で、深紅色の花をよく咲かせます。Nymphaea laydekeri の交配品種のいくつかは小さな池には最適です。'Lilacea' は淡いピンクから深いバラ色のグラデーションで、'Fulgens' は、深紅色、'Purpurata' はワインレッドです。

池の深さが30~90cmの場合: Nymphaea 'James Brydon' が最良の品種のひとつでしょう。葉の色も紫色で、のちに緑色に変わります。花色は濃いピンクか赤で、花は完璧な形をしています。Nymphaea marliacea にはこの深さに適したいつくかの品種があり、'Chromatella' は淡い黄色の花、'Carnea'は薄いピンク、'Rose Arey' は濃いピンク、そして'Willium Falconer' は深紅色です。



 睡蓮以外にも池の底に植え付けて葉が水面に浮かぶ植物がいくつもあります。水生植物のカタログを手に入れるのが最良の方法です。

ミズサンザシ Aponogeton distachyus

 スイレンと同じように大きな葉が水面に浮かんで水中への日光をさえぎる働きがあります。中心が黒の目立つ白い花を春から夏にかけて咲かせます。

アカウキクサ Azolla caroliniana

 小さな赤茶色の葉をもつ浮遊性のシダで、たくさん重なって水面をおおいます。


池のふちや沼地の植物 Marginal and bog plants


 池のふちへの植栽は、水と陸地の境界がゆるやかに移ろうようにすることと、野生動物の隠れ場を提供するのに重要です。何百羽の鳥たち、何百万匹の昆虫、そしてハリネズミさえも水飲み場として利用していくのが分かっていくでしょう。ですから、彼らを庭に惹きつけるのにとても有効な手段となります。池のふちを植物がおおっていれば、その下から池に近づいて水を飲み、危険を感じたらさっとその下に隠れることができて、彼らにとってより居心地がよくなるでしょう。また池の周りに沼地があれば、沼地にしか植えられない植物を植えるスペースを持てます。

 ここでも、植え付けに適した植物は何十種類ありますので、以下のリストは店での楽しみのひとつの提案に過ぎないことを強調しておきます。


ショウブ Acorus

 高さ90cmで、A. calumnus 'Variegatus' は緑色とクリーム色のストライプの長い刀状の葉をもち、A gramineus 'Variegatus' はよく似ていますが大きさがやや小さく、どちらも水深5cmぐらいのところに育ちます。


アルム・イタリカム Arum italicum 'Pictum'

 高さは38cmほどで、そのすばらしい大きな槍の形の葉は白い斑が入って愛らしく、冬も枯れません。9月には赤い実をつける穂を伸ばします。


アスチルベ Astilbe

 沼地に適した植物で、手の届かないところの植物の項で紹介しています。


リュウキンカ Caltha palustris

 高さは30cmほどで、早春に花が咲きます。特に育てる価値がある品種には、八重の黄色い花をつける'Plena'、白い一重の花の'Alba'、そして大きな花をつける'C. polypetalaなどがあります。


ユーフォルビア・パルストリス Euphorbia palustris

 高さは120cmで、緑と黄金色のすばらしい花を夏の間咲かせつづける端麗な植物です。


オニブキ Cunnera manicata

 広大な沼地の庭園に限られますが、この巨大な葉の植物は高さが240cmほどまで成長し、葉は大きな傘のようになります。冬の間は休眠芽を保護しておく必要があります。


アイリス Iris

 高さは45~60cmで、沼地でもよく育つよい品種がいくつかあります。ハナショウブ I. kaempferi は赤紫や紫、白などの色の愛らしい花をつけます。カキツバタ I. laevigata は青紫の花のほか、濃い青や白い花の品種もあります。'Variegata'という品種は葉が斑入りです。キショウブ I. pseudacorus は少し草丈が高く、クリームがかった黄色い花をつけ、ワイルドアイリス I. versicolor 'Kermesina' は赤紫色の花です。


ベニバナサワギキョウ Lobelia cardinalis

 高さは150cmで、濃い赤色の茎を伸ばし、夏の終わりに血のような赤い色の花をつけます。耐寒性がやや弱いので、冬にはおおいをかけたり、念のために刺し穂をしておくのがよいでしょう。


ミズバショウ Lysichiton

 高さは90~120cmで、深いぬかるみが必要で、大きな沼地に限られると思います。もし育てることができるなら、その巨大な黄色あるいは春の白い仏炎苞とそれに続いて茂る大きな葉に失望することはないでしょう。


ミゾホオズキ Mimulus

 高さは30cmで、ニシキミゾホオズキ M. luteus は赤い斑点のある黄色い花が咲き、ムラサキミゾホオズキ M. ringens は青い花が咲きます。


ワスレナグサ「マーメイド」 Myosotis scorpioides 'Mermaid'

 高さは7.5cmで、改良されたワスレナグサでコンパクトな品種。夏に長期間にわたって青い花を咲かせます。


プリムラ Primula

 湿地でも生育する品種がいくつかあります。プリムラ・ブリーアナ P. bulleyana は45cm程度で日なたあるい日かげで育ち、5月から6月に黄色い花の渦を作り出します。ヒマラヤン・カウスリップ P. florindae は90~120cmで、枝垂れた釣鐘形の薄い黄色の花を7月から9月にかけて咲かせます。クリンソウ P. japonica は枝付き燭台形のひとつで、大きな花穂にピンクや白あるいは濃い赤色の花を4月から5月ごろに付けます。プリムラ・プルウェルレンタ P. pulverulenta は高さ60cmほどでその後に赤い花を咲かせます。


キンバイソウ Trollius

 高さは75cmほどで、レモン色や濃い黄色の大きな丸い花を夏に長期間にわたり咲かせます。