はじめに FOREWORD


はじめに FOREWORD



この本を長い間私は頭の中で温めていました。

 熱心な保護主義者であり自然を愛する者として、こどもの頃からずっと私は庭で農薬を使用するのに不安を感じてきました。ともかくも何十万もの生き物の大量殺戮は私の楽しみを台無しにしたのです。なぜなら、ガーデナーとして私は自然と親密な関係を築いていたので、それが悪いことだと知っていたからです。

 それにもかかわらず、園芸のアドバイザーとして、失敗すると運命づけられた方法を勧めるわけにもいきませんでした。ありのままの自然は大きく開けた土地では素晴らしく見えるかもしれませんが、庭という限られた範囲の中ではそれは混乱でしかありません。二つの対立する意見を和解させるのはとても難しいのです。

 その答えはゆっくりと私に近づいてきました。すなわち農業におけるすべての病害虫の管理上の問題が単一栽培が原因で引き起こされると気づくことから始まったのです。もし広大な地域に単一の作物を栽培すれば、広い範囲から害虫を引き寄せるに決まっているのです。

 私がこれについて研究を始めたころ、ほかの多くの種類のカモフラージュのための植物の中に隠して栽培すると、「この町で一番のアブラムシさま御用達お食事処」という広告は減らすことができることを発見しました。そのとおりだ、と私の分身は言ったのですが、野菜畑で一つの畝に5、6種類もの植物が混在するというのは普通のガーデナーには発狂ものです。

 その後、ガーデニングの歴史に関する書籍を読んでいると、中世の庭園では個々の植物をまったく区別していなかったという事実を知りました。食用にされるか、香りを楽しまれるか、単に鑑賞されるかに関わらず、どれも植物の一種であり、すべて一緒に育てられていたのです。

 だから、何故駄目なのかという疑問が出てきました。何故、花は庭の決まった場所に植えられ、果樹は別のところに育てられ、そして野菜はいつも庭の裏のほうに隠すようにして育てられなければないらないのか?どうしてみんな同じボーダー花壇に植えてはいけないのか?ということです。

 最終的には、自然主義者との対談で私は確信しました。チョウたちを引きつけるために庭をトゲだらけのイラクサやアザミでいっぱいにする必要はないこと、鳥が巣をかける場所を提供するために庭に野生のオークの木を育てる必要もないことを発見したのです。病害虫を減らすのに役立ち、人に日々の喜びを与えるワイルドライフ(野生動物)の数を増やすのに、野生の植物の存在は必須のものではありません。ただ、できるだけ幅広い種類の植物を育てれば、すべてがお互いに幸せになり、あとは自然に任せればよいのです。

 いやいや、まったくこれらはちょっと夢のような話ではありませんか。まったく私が考えていたのと同じです。しかし、どうぞこの本を読んで、いろいろ試してみて下さい。自分の庭全体を一気に作りかえる必要はありません。一か所の花壇から初めて見てください。きっとその結果に喜び、もっと他のところでもやってみたいと思うでしょう。

 それはガーデニングの方法としてはちょっと変わっているかも知れませんが、すばらしく美しい庭、果物や野菜の自給自足、魅力的なワイルドライフが飛び回る庭、そして私がかつて関わったことのないような最も面白く創造的なガーデニングを保障してくれるでしょう。それ以上のことは誰も求めないだろうと私は思います。

 この本を楽しまれることを望みます。