第5章 装飾的植物: 球根類

第5章 装飾的植物  DECORATIVE PLANTS



ఔ 球根類 BULBS ఔ




 もしかしたら皆さんは球根を植えるスペースなんてない、といわれるかもしれません。球根は灌木や多年草の下のもっとも深い層に位置し、多くはそれらの間をくぐって出てくるように植えられるかもしれません。実際、春に花を咲かせる球根はそうなるように植えるのが最良です。冬に完全に地上部が枯れてしまう多年草の中に植え付けるのです。ギボウシのような大きな葉を出す多年草が最適です。球根の花が終わったあとのだらしなくなった球根の葉が、多年草の大きな葉に覆われて見えなくなり、完璧な組み合わせです。

 しかしこの庭に私が最初に植物を植えてから、めったに乾いた球根は植えていません。私がやっているのは、秋にポットに掘り上げて、一つのポットに何個かの球根を入れておきます。そして戸外にもっていき、樹皮に埋めたり、ボーダーのどこかに埋めたりしておきます。そして春になってどこに球根植物が必要かを見極めてポットから取り出して植えます。花が終わったら、そこに植えっぱなしにしても良いですし、掘り上げて次の年のために球根を太らせるように溝に集めて入れておきます。秋になったらまたポットに掘り上げます。これはまさしく球根植物を花壇へ花の時期だけ仮植えする方法で、スイセンやチューリップ、ヒアシンスなどには優れた方法です。

 もしこの方法をやってみようと思うなら、ポットに植える深さが重要です。スイセンのような大きな球根はときどきポットの深さが足りません。その場合は球根をピートに埋め込んで表面から正しい深さになるようにします。植えるときには、十分深く植えて緑の茎の部分だけが見えるようにし、ピートの中にあった白い部分は土の中になるようにします。

 球根を地中に残して増やしたいという場合ももちろんあるでしょう。ユリやアリウムなどはそのままにしておき、多年草と同じ扱いにしますが、耐寒性の弱いグラジオラスなどは秋に掘り上げて乾いた凍結しに場所で春まで保存します。

 ここでも繰り返しますが、球根にもたくさんの種類、品種があり、ここで紹介するのは自分で育ててみてうまくいったものに限ります。(球茎、あるいは塊茎も、ここでは「球根」という表現をしています。)


手の届かないところの球根植物 Out-of-reach bulbs


 ボーダー花壇の中央でも十分な高さになる球根もいくつかあります。


アシダンテラ Acidanthera

 60~90cmの高さの花茎に赤茶色の斑点のある白い香りのある花をつけます。7月から10月まで咲き、切り花にも最適です。3月半ばに日の良く当たる所に7.5cmの深さで15cm間隔に植え付けます。


アリウム Allium

 玉ねぎの仲間は丸い花をつけ、背丈の低い草花の中から立ち上がって、とても目立ちます。アリウム・アフラチュネンセ A. aflatunense と アリウム・アルボピロスム A. albopilosumは60~90cmに成長し、どちらの品種も球形のライラック色の花を6月につけます。秋に球根の大きさの2~3倍の深さで23cm間隔で植え付けます。


グラジオラス Gladiolus

 大きな花をつけるグラジオラスはボーダー花壇には難しい植物だと私は思います。しかし、素晴らしい切り花になるので、少しは植えてみたい植物です。その花は大変よく知られていますので説明するまでもないでしょう。たくさんの花色から選べますし、90~120cmほどの草丈になります。もちろん耐寒性が弱いので秋に球根を掘り上げて、4月にまた植え付ける必要があります。ButterflyタイプあるいはPrimulinusタイプが草丈が低くて繊細なのでボーダー花壇にはよいと思います。


Lilium

 ユリはこのタイプの庭には最適です。日なたで良いものもあれば、半日かげを好むものもあります。しかし、どのユリも根は日かげを好み、肥沃な土を好みます。ですから日なたを好む種類でも、根を日かげにしてくれて花はその上に咲けるような植物と一緒に育てるのが理想的です。ごく浅く植えるマドンナリリー(L. candidum)を除けば、15cmぐらいの深さに植えつけます。草丈は種類によって異なり、30~150cmぐらいです。


スイセン Narcissus

 スイセンも改めて説明する必要はないでしょう。大きな種類は高さが45cmぐらいになるので、花壇の前列のやや後方あたりに適します。ユリにはもちろん純粋な黄色で人気の花の'King Alfred'から、白い花びらとオレンジ色のカップをもつ'Sempre Avanti'まで、何十もの品種があります。八月に球根の大きさの少なくとも2~3倍の深さに植え付けます。浅く植えると最初の年には花が咲かないことがあります。花が終わってしまっても最低6週間は、葉を切ったりきつく束ねたりしないようにして、次の年に花を咲かせる栄養を蓄えられるようにします。


チューリップ Tulipa

 大きなスイセンと同じく、このタイプの庭にはどこに植えるか難しい植物ですが、緑しかないところに春の色をちりばめるために少し植えます。高さは30~75cmぐらいで、いろんな花色が選べます。花の時期は、3月下旬に一重早咲き系から始まり、4月には八重早咲き系、メンデル系、トライアンフ系、ダーウィン系が咲き、五月以降にユリ咲き系、フリルのあるパーロット系と続きます。いずれも9月に10~15cmの深さに植え付けます。




ボーダー前列の球根植物 Front-of-border bulbs


アリウム Allium

ボーダーの前列に適した草丈の低いネギの仲間が何種類かあります。A. flavumは青みがった葉に花茎を30センチほど伸ばし、夏の盛りから終わりにかけて黄色い花を咲かせます。A. pulchellumは15cm以上には伸びず、ライラック色(白い品種もあり)の釣り鐘状の花を咲かせます。同じように綺麗なのがにら A. tuberosumで、ガーリックチャイブとして知られ、ハーブとして育てられます(ハーブの項を参照)。


アネモネ Anemone

 最初に咲くのはハナアネモネ A. blandaで、2月には咲きます。ボーダーの前列で華やかに、ブルーやピンク、あるいは白の色合いの大型のキク科の花を咲かせます。花が咲くためには日当たりが良い必要がありますが、球茎は少し日かげのほうがよく、そのような庭が理想的です。球根は9月に深さ5cmぐらいに植え付けます。

 人気のあるポピー・アネモネ A. coronaria の種類が2系統あります。セントブリジッドSt Brigidは半八重で、De Caenは一重です。いずれも赤、青、白、そして紫の花色があいます。春に咲かせるには秋に、夏に咲かせるには春に2.5cmの深さに植えます。


チオノドクサ Chionodoxa

 チオノドクサは可愛らしい釣り鐘型のブルーかライラックの色で中央が白い花を咲かせます。草丈は15cmほどで、日なたや半日かげで簡単に育ちます。深さ5cmぐらいに秋に植え付けます。


コルチカム Colchicum

 秋に咲くこの花はオータム・クロッカスと呼ばれていますが、本当のクロッカスではありません。しかし大きなクロッカスのように見方によっては見えないことはありません。紫と白の花です。7月から8月に日かげに植え付けて7.5cmほど土をかぶせます。低い植物と一緒に植えると、その弱い花茎を支えてくれます。草丈は15~23cmです。


クロッカス Crocus

 他にあまり花のない早春に花が咲くので、この庭にとって素晴らしい植物です。花壇用の草花として使うこともでき、その場合は秋には掘り上げて水生植物用のざる状のポットに入れておき、春にそのまま植えつけます。花が終わったらポットごと掘り上げて邪魔にならないところに埋めておきます。沢山の花色から選ぶことができます。草丈は15~23cmです。


セイヨウカタクリ Erythronium dens-canis

 英語名で「犬の葉のスミレ」と呼ばれるカタクリは半日かげを好み、乾いた球根ではなく葉が出た苗の状態で購入したほうがうまくいきます。茶色の斑がはいった葉は魅力的で、花色は青みがかった薄紫で、花びらは反転しています。花色が白やクリーム色のものもあります。草丈は15~23cmです。


スノードロップ Galanthus nivalis

 スノードロップはぜひ必要です。1月の終わりから2月には咲き始め、春の訪れを最初に知らせてくれます。15cmほどの高さで、緑色の模様が入った可愛らしい花をつけます。春の終わりごろに、ポットに育てられたものや最近掘り上げたものを植えつけるのがベストです。乾いた球根を植えるのはうまくいかないことも多いからです。


ムスカリ Muscari

 ムスカリは日なたでよく育ちます。丈は15cmぐらいで、球形に近い青い花がたくさんついた花茎を春に伸ばします。これも私は花壇用の花として、ざる状のポットに植えて花が終わったらポットごと掘り上げます。


スイセン Narcissus

 ボーダー花壇の前列に適したスイセンも何種類かあります。N. triandrus は15~30㎝に育ち、花びらは魅力的にそり返り、花色はレモンイエローか白色です。N. cyclamineus の交配種も同じくらいの草丈で、'February Gold'という品種は濃い黄色で花びらがそり返り、'Tete-a-tete'という品種は15cmほどの花茎に1~2個の濃い黄色の花をつけます。8月に球根の大きさの2~3倍の深さに植えつけます。


シラー Scilla

 たくさんの花が一緒に咲く様は息を飲むような美しさですが、この庭にも一塊にして植えてもとても見栄えがします。シラーも私は花壇に植えつける花として扱い、ざる状のポットにたくさん一緒に植えこんだ状態で花壇に植えこみます。S. bifolia は2月から3月頃に濃いブルー、ピンク、あるいは白色の小さな星形の数個の花が花頭をつくって咲きます。草丈は10~15cmです。S. siberica も草丈は10~15cmで、濃いブルーの釣鐘状の花をつけます。秋に7.5cmほどの深さに植えつけます。