第5章 装飾的植物: 種からの育苗

第5章 装飾的植物  DECORATIVE PLANTS



ఔ 種からの育苗 RAISING FROM SEED ఔ




 植物を一番お金をかけずに育てる方法は、間違いなく、種から育てる方法です。そして最もわくわくする方法の一つですが、自分の庭で育てた植物から種子を集めるとすればもっと素晴らしいでしょう。一部を除くすべての永久的な野菜は種から育てられますし、一年草や二年草もすべてかのうっです。多年草の一部も種から育てることができます。もちろん高木や灌木も種から育てられますが、これについては本書では扱いません。


直まき法 Direct sowing


 多くの草花や野菜は屋外で直接種子をまくことができますが、装飾的菜園での方法は少し異なります。

 まず第一に、土が十分暖かくなるまでは種はまかないことです。種子が発芽するには温度が少なくとも7度は越える必要があります。しかし土壌用の温度計でいつも測定していない限り、正確に温度を知ることはできません。そこで、屋外で種をまくときは、早くても3月までは待つことです。寒い地方では4月まで待つ必要があるかも知れません。もしクローシュがあるなら、1か月は早く始められるでしょうが、土が事前に温まるようにするために少なくとも3週間ぐらいまえにあらかじめ種をまく場所に置いておく必要があります。

 この庭の大きな利点の一つは、すべてを小さな区画で行うことです。初冬に透明なビニールで一部分をカバーすることはたいした問題はありませんし、そうしておけは土は乾いて温まりやすいので、ほかの人たちより2週間ぐらい早く始められることでしょう。

 私の種まき法は極めて儀式化しています。各ステップはその年の最初だろうと、ほかの作物の収穫のあとだろうと、いつも慎重に行います。

 大切なことは、長い列状に育てるのでなく、狭い区画に育てることです。小さめの不規則な形の区画で、たいていは円または楕円形になります。最初の仕事はよく成熟した堆肥をバケツ一杯加えてよく耕しておくことです。隣の植物の根を痛めることがたまたまあるかも知れませんが、注意して行えば大した問題にはなりませんし、むしろ過度な競争を避けるために一種の剪定として必要なことではないかと思います。この庭でつくろうとしている高度に肥沃な土壌では、大きく成長を損なうようなことは決してありませんでした。ただ、15cm以上の深さまで耕す必要はありません。

 それから思い切って手のひら一杯の血粉や魚粉、骨粉をまいておきます。特にベジタリアンやエホバの証人の人たちに多いですが、血粉や魚粉、骨粉などを使うことに抵抗を感じるガーデナーもいますが、その場合は何か他の代用品を使用することになります。農場の肥やしをたくさん手にいれることができるなら、それで十分です。鶏糞などから作られている濃縮した肥料を買っても良いでしょう。

 土を耕したらレーキかフォークの背で地面を平らにして、踏みつけるかレーキの背で押さえつけて地面を固めます。次に種をまく溝を先のとがった棒で掘ります。いろんな道具、例えばレーキの角や玉ねぎ用のホーなど試してみましたが、結局単純な棒が一番でした。種まきに必須の浅い溝も容易に作れます。

 溝と溝の間隔は、植える植物の種類によって異なりますが、一般的に推奨されている間隔よりは少し狭い間隔でも大丈夫なことは覚えておいてください。それは溝の間に踏み入る必要はなく、また土壌が十分に肥沃であるからです。私は例えば、たいていの耐寒性の一年草の種は15cmの間隔でまきます。多少の間引きを行えば綺麗な茂みをつくります。

 種は薄くまきます。種を何個も一緒にまくと間引きが大変になるだけです。種をまいたらレーキで土を少しかぶせるか、あるいは手で土をかけて、手のひらで押さえておきます。

 もし土が乾いているようなら、種をまく前に水をかけましょう。もしまいた後に水をかけると、土にふたをかぶせたようになって表面に硬い殻を形成して、芽が突き破るのが難しくなることがあるからです。ですから、種まき用の溝に水を注いでから種をまき、その上には乾いた土をかぶせます。

 野菜の種まきも同様ですが、間隔は多少異なります。第7章ではそれぞれの野菜の説明に間隔を記載しています。




温室での種まき Sowing in the greenhouse


 温室は耐寒性のないオーナメンタルな植物を育て始める時にとても役に立ちますし、野菜の場合も耐寒性の有無にかかわらず役立ちます。

 温室で種をまく前に最初に確認しておくことが2点あります。ひとつは種の発芽に光が必要かどうかです。インパチェンスやセロリなどは土をかぶせないほうがよく発芽しますが、ほかの植物の多くは暗いほうがよいようです。二つ目は、発芽に適した温度を確認することです。アマチュアのガーデナーの温室では正確な温度の管理はむずかしいかもしれませんが、できるだけ適した温度に近づけるように頑張りましょう。

 発芽には小さなコンテナで十分ですから、私はふつうポットか皿、あるいはトレーにまきます。たいていの庭には十分な苗を育てられます。種まき用のコンポストを使用し、詰め込みすぎないようにします。トレーに入れて手の指を使って2回ほど押さえます。そして容器の一番上の高さでならし、最後に板を使って押しかためます。

 そして、種まきの前に水をかけます。あとで水をかけると種が水に流されて一塊になったり、容器から流れおちたりしやすいからです。

 種まきは、左の手のひらに種を持って手を半分閉じるようにし、右手で左手の一番上の辺りをたたくようにします。そうすれば種は正確に手のひらの溝に入り、薄く散らばります。

 種をまいたら、種がとても小さい場合を除いて、目の細かいふるいを使い、少量のコンポストで種をおおいます。しかしやりすぎは禁物です。多すぎると種が必要以上に深くなってうまく発芽しないことがあるからです。

 もし種がごく小さい場合にはコンポストで覆わないでください。ただ板をつかってちょっと押し付けるだけにしておきます。もし発芽に光が必要な種の時には細かいバーミキュライトをかぶせるのがいいでしょう。園芸用の品質であることは確認が必要でガーデンセンターで購入可能です。コンポストの表面で種がしっかり安定し、しかも光も届きます。

 暗いところを好む種の場合は不透明のビニールで覆い、光を好む種は透明のシートやガラスで覆います。必要ならコンテナは育苗器に入れますが、発芽に適した温度より高くなると低い時より結果が悪くなることは忘れないでください。

 最初の苗の発芽を確認したらすぐに覆いをはずして育苗器から出し、少し低い温度にします。ここで苗はしっかりと育つためには十分な日光を必要とします。しかし暑い日光にさらさないようにしないと葉が焼けてしまいます。苗に直接日光が当たる場合には、新聞紙で覆います。

 葉をもって容易に扱える程度まで苗が大きく育ったら(茎をもって扱うと苗をダメにしやすいです)、庭に植え付けられるサイズまで育てるために広い間隔で植え替えます(これは「鉢上げ」と呼ばれます)。




育苗トレイでの種まき Sowing in modules


 プラスチック製の育苗トレイに種をまく方法が最近一般的になってきています。たくさんの四角い区画(セル)に区切られたトレイです。一年草の種まきに特に役に立つと私は思いますし、野菜の種まきにも使っています。

 種まき用のコンポストを前の項と同じやり方でトレイに入れます。種をひとつまみそえぞれのセルにまきます。種のサイズが十分大きい場合はもちろん1個ずつまけますが、一年草の小さな種の場合、私は何個か一緒にまいて間引きも特にやりません。一つの茂みをつくりますから、そのまま根を痛めることなく最終的な場所に植え付けつけます。こうすれば一、二週間の節約になり、良い結果に終わります。そしてもちろん、面倒で退屈で時間のかかる移植を容易にしてくれます。




苗の順化 Hardening off


 外気に慣れさせるためにはコールドフレームが必要で、装飾的菜園では必需品です。外気の低い気温に植物を徐々に慣れさせるのに使うケースです。温室で育てた苗を庭に植え付ける3週間ほど前にこのコールドフレームに入れます。入れた最初の日はふたは閉めておきます。次の日は昼間だけちょっとふたを開けておき夜は閉めます。ふたを少しずつ広く開けていきますが、夜は閉めておきます。そのあと夜も少しずつ開けていくようにして、植物はだんだん外気温に慣れ、花壇に植え付けても成長を止めることがなくなります。




多年草の種まき Sowing perennials


 多年草を種から育てるには3つの方法があります。温室にスペースがあるなら、3月にポットかトレイに種をまいてほんの少し暖かくし、その後7.5cmのポットに植え替え、花壇に植えつけるまで育てます。

 あるいは、育苗トレイに種をまいてそのままポットに植え替えることなく育てます。この場合は少し早めに花壇に植えつける必要がありますが、大きさは少し小さめになるでしょう。いずれの方法でも1~2週間は寒さに慣れさせてから花壇に植えますが、その年のうちに花を咲かせるでしょう。

 もし温室が使えない場合には、5月に屋外で種をまいて、花壇にはその年の秋か翌年の春に植えつけます。この方法だととても安価にすばらしい植物を育てることができるのですが、花は翌年となります。ボーダー花壇に苗床のスペースが確保できないときには、種まきトレイを使います。


耐寒性一年草の種まき Sowing hardy annuals


 これらの種は3月か4月に土壌が暖かく乾いてきたら直接花壇にまくことができます。あるいは2月か3月にコールドフレームの中で種まきトレイにまきます。暖房は不要で、そのころにはコールドフレームの中は空っぽなので良い方法です。根がしっかり張ってきたらすぐに植えつけるか、あるいはボーダーに空きができたときにすぐに植えつけられるようにポットで育てておきます。


半耐寒性の一年草の種まき Sowing half-hardy annuals



 半耐寒性の一年草うは耐寒性のとちがい、ちょっとした霜にあたるだけでためになってしまいます。暖房した温室で1月末ごろに種をまき、4月まで温室です。ポットにまいてトレイに移すか、ある
は種まきトレイに直接まきます。7.5cmのポットで育てると立派な苗になりますが、それだけ費用もかかります。ただ、一部の苗はポットで育てて、空きスペースに備えます。

 外の寒さにちゃんと慣らしてから、霜の危険がなくなる5月末から6月の初めに花壇に植えます。


二年草の種まき Sowing biennials



 二年草は多年草と同じ方法で屋外の苗床に種をまきます。5月に始め、苗が扱いやすい大きさに育ったら15cm間隔に植え替えます。そして夏の花が終わった秋に最終的な植え付け場所に定植します。あるいは、花を咲かせたい場所に7月から8月に直接種をまく方法もありますが、いちばん良い時に一年草ばかりになってしまうのが欠点です。ですから、もし苗床や整列して苗を植えるスペースがない場合には、耐寒性の多年草の項で紹介した育苗トレイへの種まきを6月の終わりに換気のきいたフレームか屋外に種をまきましょう。そして最終的な場所に移植します。


種取り Collecting seed


 ある種の植物では簡単に自分で種を取ることができます。ほとんどの多年草や一部の一年草などです。しかしF1品種(雑種第一代)や多くの庭用の交配種はやめておいたほうがよいでしょう。というのは自分で取った種から育つ植物はその親と同じ性質と同じではないからです。

 必要なものは紙袋と鋭い目です。種が成熟してから採取するのが大切ですが、種が落ちてしまう前に取らなくてはなりません。つまり、種の入った実が色づいてきたら毎日見回る必要があるということです。実が割れてきたらすぐに実を取って紙袋に入れるか、温室に広げた新聞紙の上に置きます。日が照らずとても乾燥している所では涼しいシェッドに上下逆さにしてつるしておきます。種は自然に落ちるので集めて、そのまままいたり、保存したりします。

 残念ながら、すぐに種まきするか春まで待つべきかを知ることはなかなかむずかしいので、最初は試してみるしかありません。半分に種を分けて、一方はすぐに種まき用コンポストを入れたポットにまき、粗い砂をかけて換気の良いコールドフレームに入れておきます。残りは春まで待ってから少し暖房したところで種をまくのです。記録をつけておけば間もなく一番うまくいく方法を発見することができるでしょう。