第10章 害虫、雑草、病気の管理: 生物学的な害虫対策

第10章 害虫、雑草、病気の管理 CONTROL OF PESTS, WEEDS AND DISEASES


ఔ 生物学的な害虫対策 BIOLOGICAL PEST CONTROL ఔ



 最近急速に進歩してきている方法が生物学的な方法を使う病害虫の管理です。すでに害虫を捕食する天敵や害虫を死滅させるカビなどが実用化しています。これらは今のところ温室内で主に使用されていますが、それは害虫が外に逃げたくても逃げ出せないという理由からです。屋外で使用できる方法もひとつふたつはあります。


 イモムシ Caterpillars

 バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)は細菌の一種で粉末状で売られていて、粉末の殺虫剤のようにも見えます。水に溶かして噴霧すると活性化してイモムシを退治します。消化器系に作用してイモムシだけに効果があります。噴霧するとすぐに食べるのをやめ、そのうちに死にます。キャベツのモンシロチョウの幼虫に特に有用です。


銀葉病 Silverleaf disease

 この病気はスモモやサクランボ、さらに特にリンゴやアプリコット、アーモンドなどがかかりやすい病気で、トリコデルマ (Trichoderma) というカビの一種が対策に使用されます。銀葉病の最初の症状は葉が銀色になることで、そのあと茶色くなって枝まで枯れてきます。感染した枝を切ると切り口に茶色や紫色のしみが見られます。

 トリコデルマはペレット上のものを木の幹に あけた穴にいれて使います。幹にらせん状に10cm間隔で穴を開けて、一つの穴にペレットを3個ずつ入れ、鳥がつついて取り出さないように穴はパテや切り口保護剤でふさぎます。

 粉末状のものを売られていて、ペーストに混ぜて剪定の切り口に塗れば病気にかかりやすい木の病気の予防にも使えます。




 コナジラミ Whitefly

 オンシツツヤコバチ (Encarsia formosa) は小型のスズメバチの一種でコナジラミを駆除します。コナジラミは多くの植物から樹液を吸って弱らせます。

  このハチはコナジラミの幼虫の体内に卵を産みつけ、メスバチ一匹当たり50ぐらいのコナジラミに寄生させます。タバコの葉に乗せた形で購入でき、温室内の害虫がつく植物の上に吊り下げて使います。直射日光や散水があたらないよう注意します。21度以上の暖かい環境ではハチの成長がコナジラミを上回って効果がありますが、低温では逆になって効果は低くなります。

 アカダニ Red spider mite

 カブリダニ(Phytoseuilus persimilis)は小さなダニで、温室の害虫であるアカダニを駆除するのに使われます。アカダニは小さな赤いダニで、虫眼鏡でやっと見えるほど小さな虫です。被害を受けると赤いかすみがかかったようになり、最悪の場合は植物全体がくもの巣で覆われたようになります。植物の樹液を吸って植物を衰弱させます。

 この捕食ダニはふつう豆の葉についた形で供給されます。 これを温室にもっていってあちこちに放ちます。というのはこのダニはある区域のすべてのダニを片付けるまで他の場所に移動しようとしないからです。毎日一匹で30匹を食べます。温室に導入したら、急速に繁殖してアカダニを1年間は退治してくれます。

 この方法の最大の問題点は、いったん餌となるアカダニがいなくなると餌がなくなるために死滅してしまうことです。しかし、化学薬品を使用せずに害虫を退治するとても効果的な方法で、多少の時間と費用をかけてもやる価値があると私は思います。